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ごじゅうねんだいのぶんがくとそこにあるもんだい
五〇年代の文学とそこにある問題
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十三巻」新日本出版社、1979(昭和54)年11月20日初版発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,472 字 · 50 页
日本では、一九三三年以後の社会と文学の形相があまり非理性的で殺伐であったために、その時期に青年期を経たインテリゲンチャの多くの人が、その清新生活では主として人民戦線のフランスに亡命した形があった。野間宏にしろ、加藤周一にしろ。それらの人たちは、いま日本の民主革命の中にその精神において帰還している。野間宏が、ジイドやヴァレリーの言葉からぬけでて――ヨーロッパ的小説作法(ブルジョア民主主義のアヴァンギャルドの手法)を、日本の民主革命の課題にそった人民の言葉で人民の生活を描こうとしている昨今の試みは、すべての人に期待を抱かせている。彼が一応のスタイルをこわして、ヴァレリーの言葉から、日本庶民の理性の暗い、理性によって処理されない事象と会話の中に突入している生真面目さを、ただ日本語の不馴れな作家の時代錯誤とだけ云いすてる人はないだろう。
民主革命の長い広い過程を思えば、その課題の必然にしたがって文学はますます批評家の好みによって点づけされたり、文学流派の堰によってあちらとこちらとせきわけられるものでもなくなってきつつあると思う。一人の作家が一寸背丈を高くするために、一寸だけ他の誰かをおしつけてよいものでもないと思う。