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ごえもんとしんざ

五右衛門と新左

国枝 史郎

「大衆文芸 第一巻第一号」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,405 字 · 21 页

青空文庫

も、八方へむら/\とぞ逃たりけり。かくて時刻も移りて、祇園会の山鉾、はやしたてゝ渡しけり。五右衛門こゝは、所間遠にて、おもしろからず、よき所にて見せ参らせ候はんとて、四条の町の華麗なる家にともなひけり。さて何処よりとりて来たりけん。杉重角折、すはまの台など、あまた殿下にすゝめけり。かくて山鉾もこと/″\く通り過ければ、今は見るべきものゝ無ければ、いざ/″\故郷へ帰らんとて、また鳶の羽にうちのせて、其日の六つはじめに、伏見にぞ帰りける。帰館して後にぞ、殿下は夢のさめたる心地はしつれとぞ、宣ひけると語り給へば、五右衛門首尾を施ける」

四

だが此の事あって以来、秀吉は五右衛門をうとうとしくした。

「恐ろしい奴だ」と思ったからであった。

自然それが五右衛門にも解り、五右衛門も秀吉を疎むようになった。

遂々或る日瓢然と、伏見の城を立ち去った。

剽盗に成ったのは夫れからである。

五右衛門が伏見から去ったのを、誰にもまして失望したのは、親友の曽呂利新左衛門であった。

彼は怏々として楽しまなかった。

「面白くないな、全く面白くない。殿下も腹が小さ過ぎる。五右衛門ぐらいを使え無いとは。