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ごえもんとしんざ

五右衛門と新左

国枝 史郎

「大衆文芸 第一巻第一号」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,405 字 · 21 页

青空文庫

その中には曽呂利新左衛門もいた。

それは中夏三伏の頃で、熱い日光がさしていた。

と、一つの辻堂があった。縁下から二本の人間の足が、ヌッと外へ食み出していた。そうして其の側に一つの瓜が、二つに割られて置いてあった。

一行はそのまま通り過ぎようとした。

機智縦横の新左衛門だけが、それに不審の眼を止めた。

「徳善院様徳善院様」

彼はそっと囁いた。「誰か人が寝て居ります」

「附近の百姓が労働に疲労れ、辻堂で昼寝をしているのさ」徳善院は事も無げに云った。

「足をごらんなさりませ」

「人間の足だ、異ったこともない」

「白くて滑らかで細うございます。百姓の足ではございません」

「そう云えば百姓の足では無いな」

「瓜が傍に置いてあります」

「さようさ、瓜が置いてあるな」

「蠅が真黒にたかって居ります」

「蠅や虻がたかっている」

「あれは賊でございます」新左衛門は自信を以って云った。

「夜働きに疲労れた盗賊が、瓜の二つ割で毒虫を避け、昼寝をしているのでございます」

「うん、成程、そうかも知れない。それ者共召捕って了え!」

素晴らしい格闘が行われ、その結果賊は捕縛された。

それが石川五右衛門であった。