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ごえもんとしんざ

五右衛門と新左

国枝 史郎

「大衆文芸 第一巻第一号」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,405 字 · 21 页

青空文庫

「やあ新左、まず這入れ」

五右衛門はポンポンと座を払った。

二人は非常な親友なのであった。

その対照が面白い。

新左衛門は好男子、水の垂れるような美男であった。

それに反して五右衛門は、忍術家だけに矮身で、猪首の皺だらけの醜男であった。

新左衛門は町人出、これに反して五右衛門は、北面の武士の後胤であった。

一人は陽気なお伽衆、然るに、一方は陰険な細作係というのであった。

が、二人には一致点もあった。

「世の中が莫迦に見えて仕方が無い」――と云うのが即ち夫れであった。

そうして夫れが二人の者を、ひどく仲宜くさせたのであった。

「五右衛門」

と新左はニヤニヤしながら「俺は滅法儲けたぜ」

「お前のことだ、儲けもしようさ」五右衛門は茶釜を引き寄せた。

「まあ聞くがいい、耳を嗅いだのさ」

「え、なんだって、耳を嗅いだ? なぜそんなことをしたんだい?」五右衛門も是れには驚いたらしい。

「手段だよ、手段だよ、金儲けのな」

三

「で、誰の耳を嗅いだんだ?」

「殿下の耳を、云う迄もねえ」

「へえ、それで金儲けか?」

「加藤、黒田、浅野、生駒、そいつらの顔を睨め乍ら、殿下の耳を嗅いだやつさ。