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ごえもんとしんざ

五右衛門と新左

国枝 史郎

「大衆文芸 第一巻第一号」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,405 字 · 21 页

青空文庫

「俺を連れて飛べるかな?」

「いと易いことでございます」

「都は祇園会で賑わっているそうだ。ひとつ其奴を見せてくれ」

「かしこまりましてございます」

五右衛門はこう云うと懐中から、鳶の羽根を取り出した。

「いざお召し下さいますよう」

それから後の光景は、こう古文書に記されてある。

「……雲の原へとぞ上りける。遙の下を見給へば、蒼海まん/\として、魂をひやせり。我にもあらぬ心地にて、なにと成りゆくやらんと覚しにける。かくて尽きぬとおもう時に、目をおきて見給へば、ほどなく大山に立りける杉の上にぞ落着ける。殿下こゝはいづくの国、いかなる所ぞと宣まへば、是こそ都の西山、愛宕山と申処にて候、祇園会もいまだ始まらず候間、いま暫爰におはしまして、ご休息有べし、さりながら、何にても食事の望に候はんまゝ、是にしばしまたせ給へ、とゝのへてきたり候はんとて、つゐ立ちけるとおもへば、くれに見えざりけり。とかくする中に、五右衛門はや帰りて、いざ/″\殿下まゐり候へとて、いかにもきらびやかなる器物に、好味をつくしける美膳をぞすへにける。殿下御覧じて、これは早速にとゝのふものかなとて、かたのごとく食したまひける。