轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ごがつのゆいぶつかん
五月の唯物観
寺田 寅彦
「大阪朝日新聞」1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,225 字 · 9 页
「早苗とる頃」で想い出すのは子供の頃に見た郷里の氏神の神田の田植の光景である。このときの晴れの早乙女には村中の娘達が揃いの紺の着物に赤帯、赤襷で出る。それを見物に行く町の若い衆達のうちには不思議な嗜被虐性変態趣味をもった仲間が交じっていたようである。というのは、昔からの国の習俗で、この日の神聖な早乙女に近よってからかったりする者は彼女達の包囲を受けて頭から着物から泥を塗られ浴びせられても決して苦情はいわれないことになっていたのである。
そういう恐ろしい刑罰の危険を冒して彼女らを「テガイニイク」(からかいに行く)という冒険には相当な誘惑を感じる若者も多かったであろうが、中にはわざわざ彼女達につかまって田の泥を塗られることの快感を享楽するために出かける人もあるという話を聞いたことがあったようである。
一度実際に泥を塗られている場面を見たことがある。その時の犠牲は三十恰好の商人風の男で、なんでも茶がかった袷の着流しに兵児帯をしめていたように思う。それが下駄を片手にぶらさげて跣足で田の畦を逃げ廻るのを、村のアマゾン達が巧妙な戦陣を張ってあらゆる遁げ路を遮断しながらだんだんに十六むさしの罫線のような畦を伝って攻め寄せて行った。