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きょうのしき

京の四季

和辻 哲郎

「新潮」1950(昭和25)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,914 字 · 16 页

青空文庫

いかにも美しい。やっぱり新緑は東京でも美しいんだなと思う。次々にほかの樹も芽を出して来て、それぞれに違った新緑の色調を見せる。並木に使ってある欅の新緑なども、煙ったようでなかなかいい。などと思っているうちに acceleration が止まったのである。東京の新緑が美しいといってもとうてい京都の新緑の比ではないが、しかし美しいことは美しい。やがて新緑の色が深まるにつれ、だんだん黒ずんだ陰欝な色調に変わって行くが、これも火山灰でできた武蔵野の地方色だから仕方がない。樹ぶりが悪いのは成長が早すぎるせいであろう。一体東京の樹木は、京都のそれに比べると、ゲテモノの感じである。ゲテモノにはゲテモノのおもしろみがある。などと、自分で自分を慰めるようになった。

が、こういう経験のおかげで、私は今さらに京都の樹木の美しさを追想するようになった。

大槻正男君の話によると、京都の風土は植物にとって非常に都合のよいものであるという。素人目にもそれはわかる。水の豊富なこと、花崗岩の風化でできた砂まじりの土壌のことなどは、すぐ目についてくる。ところでその湿気や土壌が植物とどういうふうに関係してくるかということになると、なかなか複雑で、素人には見とおしがつかない。