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きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺
酒井 嘉七
「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页
これに、花四天がからみまして押戻しが出、そして、引っぱりの見得となって、幕になるので御座います。ところが、唄が進みましても、変化にかわった白拍子が起き上らないのでございます。この瞬間、誰もがほとんど同時に、ある不気味な予感を感じたのでございましょう。あっと思わず、前かがみになりました時、舞台の横から、
「幕だ……」
と、鋭い声が聞えたのでございました。
|○|
名優、岩井半四郎の死因には、とてもむつかしい、専門的な名が付せられておりましたものの、結局、前額部に受けた外傷と、その結果としての急激な精神的衝撃のために、ご年輩のためでもございましょうが、つね日ごろから、ご丈夫でなかった心臓に、致命的な変化が起きたのでございました。――と、こう申しますれば、それでは、あの、誰一人と人間のいない、造りものの、鐘の中で、そうした原因を作る誰人がいたのであろうか――加害者は誰であろう――と、声をおひそめになるでございましょう。
「それが、さっぱり、見当もつきませぬ」
と、お答えいたしますと、
「それでは、変化の隈どりと、扮装の後見をしたのは誰であろう。