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きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺
酒井 嘉七
「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页
もし、たとえ、どうにかして、舞台の上につり下げられた鐘の内部に、犯人が隠れており、半四郎に危害を加えたとしましても、どうして逃げ去ることが出来ましょう。――長唄の囃子、鳴物入りの、絢爛たる舞台の真中に伏せられた鐘の中の殺人。よし犯人が鐘の中に、ひそんでおったといたしましても、鐘から人の目にかからぬように、出る術もございますまい。――鐘がつりあげられる時、鐘の内部につかまっていた、といたしましても、それでは、舞台の上に引き上げられた鐘の中からどうして逃げ去ることが出来ましょう。
このように申しますと、それでは、鐘の伏さっていた舞台に、奈落へ抜けるすっぽんがあったのではあるまいか。鐘が舞台に下りると、犯人は、そこから、鐘の内部にせり上り、再び、奈落へ逃げ去ったのではあるまいか。――と、仰せになるかも存じませぬ。しかし、今も申しましたように、半四郎が変化の扮装をなさるのは、鐘の中でございましたので、鐘をすっぽんの上に降ろす必要もなく、ずっと離れた、舞台の中央に近いところに、降ろされていたのでございます。従って、犯人が奈落から侵入したとも考えられないのでございます。