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きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺
酒井 嘉七
「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页
間口十五間の、この大舞台で見ますときは、さほど大きくも感じませんが、大の男、三、四人は立ったままで、すっぽりと、かむさるほどはございましょう。この鐘の龍頭に、紅白だんだらの綱が付けてございまして、その端は、しっとりと、舞台に垂れ下り、さきほども申しました、桜の木の幹に結いつけてあるのでございます。
この舞台の正面――桜の山の書割りを背にいたしまして、もえ立ったような、紅い毛氈を敷きつめた、雛段がございます。この上に、長唄、三味線、そして、お囃子連中――と居ならんでいらっしゃるのでございます。つまり、中央の向って右に、三味線の杵屋新次師匠、左側に、たて唄の松島三郎治師匠。その右と左には、各々、新三郎さま、松島治郎二さま、と申しますように、お弟子さま方が、ずらりといならんでいらっしゃるのでございます。下の段には、今も申しました、お囃子の御連中、ふえ、小つづみ、大つづみ、太鼓というように、何れも、羽二重の黒紋付、それに、桜の花びらを散りばめた、目ざむるばかしの上下をつけて、唄のお方は、唄本を前に、三味線の師匠連中は、手に三味線と撥をもち、もう、すっかり用意されているのでございます。