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じんせいみっつのたのしみ

人生三つの愉しみ

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第四号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,953 字 · 16 页

青空文庫

人間は働く機械ではなく、その休養をとり、愉しむのが当然だ。人間の愉しみは禁止せずに、その害を取り除くべく相共に努力すべきものではなかろうか。

肉体を健康にするスポーツが健全な愉しみで、そうでないものは不健全だというのも偏見だ。肉体的に健康だって精神的に健康だとは限らない。武士には文弱という思想があるし、農村へ行くと牛馬なみの働き者や力持ちが健全で、虚弱人や読書などするような人間は危険人物だというような考え方もある。然し実際はヘタな武道家はテリヤのように神経質な人物が多いものだし、農村の屈強な人物に誇大妄想や被害妄想が多いのは先程も申上げた通りである。だいたい百姓の酔い方は都会人とは違っている。我々はたいがい自分の芸ごとの話をする。大工でも左官でもそうである。色話か、自分の腕自慢か、そんなものだ。百姓は違うのである。自分の作ッた米やナスは人の物よりも品質がよいなどと語るのは極めて小数で、たいがい酔っ払うと、吉田がなんだ、片山の奴のあのザマは何だ、オレに天下の政治をやらしてみろ、というようなことを云いだす。又、農村では一寸ぐらいずつ垣根をずらして年々隣家へ侵略を試みるというような実に神経衰弱的なモンチャクが絶えないところでもあるのである。