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じんせいせいかいいん

人生正会員

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,238 字 · 23 页

青空文庫

その己惚れを利用して御機嫌を伺う法もある。

「はゝあ。それは又何ういう動機でしょうか?」

「無帽主義は髪の毛を誇りとして、こんなにあるぞということを示す為めだから、俺達髪の毛の薄くなった年寄への面当だろう?」

「飛んでもない」

「それじゃ何ういう皮肉だね」

「皮肉でも何でもありません。簡素と衛生を旨とする一種の流行でしょう。帽子を被らないと年が寄ってから禿げないようです」

「そこに皮肉があるじゃないか? 君達年寄は禿げていて見っともないから、僕達若いものは将来禿げないようにして見せるという挑戦的含蓄がある」

「社長、それは少しお考え過ぎでしょう」

「いや、決して簡素と衛生ばかりじゃない。同時に若さを誇るという不純な動機に刺戟されている」

「さあ」

「和服にしろ、洋服にしろ、帽子を被って初めて容が備うんだ。軍人を見給え。禿げるからって、帽子を被らないで歩く将校も兵隊もない。君達は我儘だ。そこに何か不純なものがある」

「成程。そう仰有られると、矢っ張り一種の不体裁ですな」

「見っともないよ。社員は容姿端正を期すべしという規定にも反く。青山君あたりはツル/\の所為か、無暗に憤慨して、帽子を被らない奴等は昇給させるなと言っている」