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ロボットさつがいじけん

人造人間殺害事件

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,836 字 · 18 页

青空文庫

だが僕は、呼吸の通っている間は、常に大きな希望を持っているのだ。敵が青龍刀を僕の頭上にふりあげたとしても、僕はその刃が落ちて来るまでの僅かな時間にまでも希望を継ぐことであろう。運さえ悪くなければ、そのとき誰かが窺いよって、その敵の胴腹に銃弾をうちこんでくれるかも知れないのであるから……。

況んや僕等には敵に対して、武器以上の武器がある。そいつは、科学である。海龍倶楽部の団員やその背後にある政府筋や某大国の黒幕連などは、政治手腕はあり、金や権力もあるであろうが、要するに彼等は科学的には失業者に過ぎない。僕等は生活様式や境遇は失業者に違いないが、一度、ハンマーを握らせ、配電盤の前に立たせ、試験管と薬品とを持たせるならば、彼等の度胆を奪うことなどは何でもない。彼等を征服するには、科学が武器である。科学! 科学! 彼等の恐怖の標的である科学を以てその心臓を突いてやれ!

僕はそこに見当をつけて、同志に指令を与えたのだ。扉を押して帰って行く林田橋二の後姿が、人造人間のようにガッシリして見えた。

僕は午前九時になると、いつものように職工服に身を固め、亜細亜製鉄所の門をくぐり、常の如く真紅にたぎった熔鉄を、インゴットの中に流しこむ仕事に従事した。