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ロボットさつがいじけん

人造人間殺害事件

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,836 字 · 18 页

青空文庫

焦熱地獄のような工場の八時間は、僕のような変質者にとって、むしろ快い楽園であった。焼け鉄の酸っぱい匂いにも、機械油の腐りかかった悪臭にも、僕は甘美な興奮を唆られるのであった。特務機関をつとめる僕にとっては、このカムフラージュの八時間の生活は、休憩時間として作用してくれる。

夕方の五時になると、製鉄所の門から押し出されて、隠れ家の方へ歩いて行った。一丁ほども行って、十八番館の煉瓦塀について曲ろうとしたとき、いきなり僕の左腕に、グッと重味がかかった。そしてこの頃ではもう嗅ぎなれた妖気麝香のかおりが胸を縛るかのように流れてきた。次に耳元に生温い呼吸づかいがあった。

「井東さん。こんばんワ」

「こんばんは、劉夫人」

「劉夫人と仰有らないで……。いじわるサン。絹子と、なぜ呼んでくださらないの!」

「劉夫人」僕は、顔をはじめて曲げて彼女の桜桃のように上気した、まんまるな顔を一瞥した。「僕は、あなたの餌食になるには、あまりに骨ばっています。もっと若くて美しい騎士たちが沢山居ますから、その方を探してごらんになってはどうですか」

「貴方は、すこしも妾の気持を察して下さらない。