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にんげんとゆわかし
人間と湯沸かし
小川 未明
「婦人倶楽部」1927(昭和2)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,082 字 · 7 页
そのことを考えると、彼女は、このよく働く湯沸かしが、かわいそうでならなかったのでした。
「ほかの人が、おまえをばかにしても、わたしだけはかわいがってあげるわ。ほんとうに、おまえばかりは、毎朝、わたしといっしょに起きて、いっしょに、よく働いてくれるのだもの。こんなにみんなのためにつくしていて、それでばかにされる道理はないはずだわ。ほかの道具たちこそ、怠けたり、ぼんやりして遊んでいたり、平常はなんの役にもたたなくていばっているのだから、しゃくにさわってしまう。ほんとうに、おまえの気持ちのわかるのは、この家では、わたしばかりかもしれないわ。」
といって、彼女は、湯沸かしをなぐさめたのであります。
ものをいわない湯沸かしは、ガラス窓から射し込むうすい日の光に照らされて、鈍色に沈んでいました。じっとしていると、疲れが出てくるものと思われました。
お竹が、同情をしたように、このアルミニウムの湯沸かしは、町から買われて、この家にきてから、すでに久しい間働いてきました。お竹が雇われてきてから一年あまりになりますが、もっとその以前から、あったものです。あるときは、炭火のカンカン起こる上にかけられて、煮立っていました。