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にんげんさんすいずまき
人間山水図巻
吉川 英治
「東京 創刊号」1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,343 字 · 21 页
いくら世の中が変ったからといって、友達の顔まで忘れなくてもいいだろう』
『けれどこんな所で、君に会おうなんて……しかも君の姿だって、まったく前の君とは似てもつかないし』
『それやそのはずだ。何しろあの峨々たる大行山脈に住んでいるんだから、俺だって、かなり野性に返ったろうさ』
『へえ、あんな山の中で、何をしているのだい』
『訊くだけ野暮だろう、近頃、大行山の名物といえば、誰だって、山賊というじゃないか』
『ふーむ……。君が?』
『なにを蔑むのだ。貴様だって今、出来心だろうがおれたちを土民の闇屋と見て、その弱身を恐喝しようとしたじゃないか』
『あやまるよ。何しろもう曠野に日は落ちかけているが、わが胃ぶくろには入る物のあてもない』
『ははは、心細いことをいうなよ、まあ来い、大行山へ』
この男は、夏駿といって、共に御林にいた頃は、すこしも曲がった事はきらいな、剛直ともおもわれた人物だったのに、それが山賊になったとは――どうしても蕭照には信じられない気がした。そのくせ自身がふと抱いたさっきの怖ろしい決意には、さしてふしぎとする反省も覚えられなかった。
山の途中へ来て一泊した。