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にんげんかい
人間灰
海野 十三
「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,345 字 · 33 页
O型とAB型――一人の人間が同時に二つの血型を持つことは絶対に出来ません。人肉の主と夫人とは全く別人です。貴下はこんな杜撰な捜索をしていながら、なぜ僕を夫人殺しなどとハッキリ呼ぶのですか」
「ウム。――」
署長はその瞬間フラフラと、脳貧血に陥りそうになった。実は血型なんてハイカラなものは考えたことがなかった。今となってこんな痛いところを突かれるなんてあるだろうか。彼の威信はこの瞬間地に墜ちた。
「どうです署長さん」なおも青谷は苛責の手を緩めなかった。「僕はそのことだけでも無罪の筈です。僕を苦しめてどうなるのです。それより、なぜあの血まみれの容疑者を責めないのです。あんな怪しい奴をなぜ……」
そのとき、背面の扉がバタンと明いた。そして青谷の知らない男の声がした。
「怪しいとは僕のことですか」
ヌックリと青谷の前に立ったのは、長身の髭だらけの工夫体の男だった。作業服はヨレヨレながら、その声は気味の悪いほどしっかりしていた。
「僕こそ無罪ですよ。署長さんの云ったように貴下には手錠が懸るのが本当です。しかしすこし事実の違っている点がありましたから、訂正して置きましょう。