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にんげんかい
人間灰
海野 十三
「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,345 字 · 33 页
――」
続いて後に立っていたのが、こんな風に名乗りをあげたが、これは工場主とはちがって、すこし才子走っているが、容姿端麗なる青年だった。
「一体どうしたのかネ」と署長は無遠慮な声を出した。
「こう再三失踪者を出すということについては、君の責任を問わにゃならん」
そういわれた赤沢博士は、眼玉をギョロつかせて署長を睨み据えた。
「三年来の失踪者が判らんのでは、わし達も警察の存在を疑いたくなりますよ。早く家内を探し出して下さい」
青谷技師は、その後方で一人気をもんでいる様子だった。
署長は「では何もかも言うのですぞ」と一喝して置いて、まず工場主から夫人失踪前後の模様を聴取した。
「わしは昨夜十時頃まで工場にいました」と博士は口だけを動かした。「わしは調べものがあったから、本館二階の自室で読書をしていたのです。十時を打ったので灯を消し、本館を出て、別館へ帰りました。そこはわしと家内との住居に充てているのです。ところが家内は私を出迎えません。わしは家内の部屋へ行ってみました。家内はそこにも見えません。いろいろ探しましたが影も形もありません。それからこっち、家内を一度も見掛けないのです。