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にんげんはんえい

人間繁栄

豊島 与志雄

「改造」1924(大正13)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,038 字 · 38 页

青空文庫

「兎に角一家繁昌で目出度い。」と津田洋造は考えた。

その目出度い一家の、一人の父親と四人の母親と十三人の子供との会合を、どうして八重子が嫌がるのか、彼には合点がゆかなかった。その上八重子の口振りによれば、彼女は何か新たな行動や思慮を取りかけているらしかった。彼はじっと八重子の様子に眼をつけ初めた。そして彼女の意外な変化に喫驚した。

どこか少しぬけてるらしいほど無反応だった彼女は、今では可なり敏感にさえなっていた。長男の一郎はもう小学校の五年生になっていたが、来年は中学の入学試験を受けなければならないと云って、八重子はひどく彼に勉強をしいて、彼が少しでも怠りがちな時には、酷しく叱りつけていた。そういう折に洋造が口を出したり、または、冬子ももう幼稚園に通うようになって世話がやけないから、お前が少し俺の用をも手伝ってくれと、洋造が忙しさの余り云い出したり、其他子供に関係のある事柄が出てくる際に、八重子はともすると険悪な言葉付になって、ヒステリーを起しかねない気色さえ示すことがあった。この前大阪のお蔦に子供が産れた時などは、些細なことに本当のヒステリーを起して、四五日むっつりと黙り込んでいた。