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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

あやめとしてはこういう心持から、又、一方主税としては、「淀屋の財宝と荏原屋敷とは、深い関係があるらしいから、探ってみよう」という心持から、二人合意で荏原屋敷の見える、ここの農家の離家を借りて、夫婦のように住居して来たのであった。

しかるに二人して住んでいる間も、主税に絶えず思い出されることは、云いかわした恋人お八重のことで、従って自ずとそれが口へ出た。そうでない時には淀屋の独楽を廻し、これまでに現われ出た文字以外の文字が、なお現われはしまいかと調べることであった。

しかしもちろん主税としては、あやめの寄せてくれる思慕の情を、解していないことはなく、のみならずあやめは自分の生命を、二度までも救ってくれた恩人であった!

(あやめの心に従わなければ……)

このように思うことさえあった。

しかし恋人お八重の生死が、凶とも吉とも解らない先に、他の女と契りを交わすことは、彼の心が許さなかった。そこでこれまではあやめに対して、故意と冷淡に振舞って来た。

が、今になってそのあやめから、このように激しく訴えられては、主税としては無理なく思われ、心が動かないではいられなかった。