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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页
「行けない、妾は、あの部屋へは! ……あの時以来十年もの間、雨戸を閉め切り開けたことのない、あの建物のあのお部屋なのだよ。……堪忍しておくれ、妾には行けない!」
恋と敵のあいだ
「おお、まアそれではあのお部屋は、十年間閉扉の間か! ……さすが悪漢毒婦にも、罪業を恐れる善根が、心の片隅に残っていたそうな。……ではあのお部屋にはあのお方の、いまだに浮かばれない修羅の妄執が、黴と湿気と闇とに包まれ、残っておることでございましょうよ。なにより幸い、なにより幸い、さあそのお部屋へお入りなされて、懺悔なさりませ、懺悔なさりませ! そうしてそれから妾と共々、復讐の手段を講じましょう。……」
「復讐? お葉や、復讐とは?」
「わたしにとりましては実のお父様、お母様にとりましては最初の良人の、先代の荏原屋敷の主人を殺した、当代の主人の主馬之進を!」
「ヒエーッ、それでは主馬之進を!」
「お父様を殺した主馬之進を殺し、お父様の怨みを晴らすのさ。……さあお母様参りましょう!」
お葉は、松女の腕を握り、亭から外へ引き出した。
この頃亭から少し離れた、閉扉の館の側の木立の陰に、主税とあやめとが身体をよせながら、地に腹這い呼吸を呑んでいた。