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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

「まず其方から。あやめよ先に!」

「あい」とあやめは褄をかかげ、梯子の桟へ足をかけた。

「あッ、しばらく、あやめよお待ち! ……何者かこっちへ! 何者かこっちへ!」

見れば月光が蒼白く明るい、眼の前の庭を二つの人影が、組みつほぐれつ、追いつ追われつしながら、梯子の裾の方へ走って来ていた。

二人は素早く雨戸の陰へかくれ、顔だけ出して窺った。

夜眼ではあり遠眼だったので、庭上の人影の何者であるかが、主税にもあやめにもわからなかったが、でもそれはお葉と松女なのであった。

「さあお母様あの館で――十年戸をあけないあけずの館で、懺悔浄罪なさりませ! ……あの館のあの二階で、御寝なされていたお父様の臥所へ、古沼から捕った毒虫を追い込み、それに噛せてお父様を殺した……罪悪の巣の館の二階で、懺悔なさりませ懺悔なさりませ!」

母の松女の両手を掴み、引きずるようにして導きながら、お葉は館の方へ走るのであった。

行くまいともがく松女の姿は、捻れ捩れ痛々しかった。

「お葉やお葉や堪忍しておくれ、あそこへばかりは妾は行けない! ……この年月、十年もの間、もう妾は毎日々々、心の苛責に苦しんで、後悔ばかりしていたのだよ。