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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

この時階段の上り口から、勘兵衛の狼狽した喚き声が聞こえた。

「不可ねえ、殺れた、旦那が殺れた! ……オ、奥様も死んだらしいわ――ッ」

バタバタと階段から駈け下りる音が、けたたましく聞こえてきた。

しかし、その音は中途で止んで、呻き声が聞こえてきた。見れば階段の中央の辺りに、勘兵衛の体が延びていた。

紐が首に捲き付いている。

そうしてその紐は手繰られて、勘兵衛の体は階段を辷って、二階の方へ上って行った。紐を手繰っているのはあやめであった。

「古沼から蝮を捕らえて来て、この座敷へ投げ入れて、直々お父様を殺した汝! 今度こそ遁さぬくたばれくたばれ!」

勘兵衛の体が二階へ上るや、あやめは勘兵衛に引導を渡し、脇差で勘兵衛の咽喉をえぐった。

ある時は主馬之進の若党となり、ある時は見世物の太夫元となり、ある時は荏原屋敷の僕となり、又ある時は松浦頼母の用心棒めいた家来となって、悪事をつくした執念深い、一面道化た勘兵衛も、今度こそ本当に殺されたのであった。

なお階下にいる敵の輩下を、討って取ろうと主税やあやめ達が、二階から階下へ駈け下りるや、飛田林覚兵衛が先ず逃走し、その他の者共一人残らず、屋敷から逃げ出し姿を消してしまった。