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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

その翌日のことである、田安家の奥家老松浦頼母は、中納言家のご前へ出で、

「お館様これを」とこう言上して、一葉の紙片を差し出した。

泉水に水が落ちていて、その背後に築山があり、築山をめぐって桜の老樹が、花を渦高く咲かせており、その下を将軍家より頂戴したところの、丹頂の鶴が徘徊している――そういう中庭の風景を、脇息に倚って眺めていた田安中納言はその紙片を、無言で取上げ熟視された。

一杯に数字が書いてあった。

「これは何だ?」と、中納言家は訊かれた。

「隠語とのことにござります」

「…………」

「昨夜近習の山岸主税こと、怪しき女猿廻しを、ご用地にて発見いたし、取り抑えようといたしましたところ、女猿廻しには逃げられましたが、その者独楽を落としました由にて、とりあえず独楽を調べましたところ、この紙片が籠められておりましたとか……これがその独楽にござります」

頼母は懐中から独楽を出した。

中納言家はそれを手にとられたが、

「これは奥の秘蔵の独楽じゃ」

「奥方様ご秘蔵の独楽?」

「うん、わしには見覚えがある、これは奥の秘蔵の独楽じゃ。……それにしても怪しい猿廻しとは?」

「近頃、ひんぴんたるお館の盗難、それにどうやら関係あるらしく……」