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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页
その間にお八重はその女猿廻しが、聡明で大胆だということと、再々田安家のお長屋へ来て、猿を廻して稼ぐのは、単なる生活のためではなく、何らか田安家そのものに対して、企らむところがあってのことらしいと、そういうことを見て取った。そこでお八重は女猿廻しを呼んで、自分の大事を打ち明けた。
「妾は田安家の奥方様附の、腰元には相違ないけれど、その実は田安家に秘蔵されている、ある大切な器物を、盗み出すためにあるお方より、入り込ませられた者なのです。もっともその品を盗み出す以前に、その他のいろいろの器物を、盗み出すのではありますけれど。……ついては其方妾の加担者となって、盗んだ器物を機会を見て、妾から其方へ渡しますゆえ、其方その品を何処へなりと、秘密に隠しては下さるまいか。……是非にお頼みいたします。事成就の暁には、褒美は何なりと差し上げます」
こう大事を打ち明けた。すると女猿廻しは考えこんだが、
「田安様の品物が盗まれました際、その責任は田安様の、誰人に行くのでございましょうか?」と訊いた。
「それはまァ奥家老の松浦様へ」
「松浦へ! おお松浦頼母へ! ……では妾あなた様の、加担者になるでございましょう! ……そうしてあの松浦頼母めを、切腹になと召し放しになと!」