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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

死んだと見えて動かなかった。

(ではやっぱり頼母の意志に従い、淀屋の独楽を渡した上、彼の配下になる以外には、他に手段はないではないか)

逆流する血の気を顳の辺りへ感じた。しかし努力して冷静になった。

(そうだ独楽を渡した上、あなた様の配下になりますると、偽りの誓言を先ず立てて、ともかくも命を助かろう。その余のことはそれからで出来る)

何よりも命を保たなければと、主税はそれを思うのであった。

(それにしてもお八重が盗人とは! お館の宝物の数々を盗んだ、その盗人がお八重だとは!)

これを思うと彼は発狂しそうであった。

(恋人が盗人とは! それも尋常の盗人ではない、お館を破滅に導こうとする、獅子身中の虫のような盗人なのだ!)

見るに忍びないというような眼付をして、主税は隣室の方へ眼をやった。

そこにお八重が突っ伏していた。

こっちの部屋から流れこんで行く燈光で、その部屋は茫と明るかったが、その底に濃紫の斑點かのように、お八重は突っ伏して泣いていた。

泣き声は聞こえてはこなかったが、畳の上へ両袖を重ね、その袖の上へ額を押しつけ、片頬を主税の方へわずかに見せ、その白いふっくりした艶かしい片頬を、かすかではあるが規則正しく、上下に揺すって動かしているので、しゃくりあげていることが窺われた。