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ことしのことば

今年のことば

宮本 百合子

「婦人民主新聞」1949(昭和24)年1月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,577 字 · 4 页

青空文庫

あのころ、また戦争がはじまるんでしょうか、と顔つきをかえ低めた声でその恐怖を示した日本の婦人は決して一人二人ではなかった。手おくれにならないうちにと、東京から疎開荷物を送り出しはじめている人の話もきいた。ところがそれほど婦人に恐怖を与える戦争に対してあのころ、わたしは戦争がいやだ。わたしたちはどんなことがあっても戦争は拒絶する、と発言した婦人たちは、果して幾人あったろう。女同士がより集ったときは、ほんとにいやですわねえ。もうわたしは戦争だけは真平ですわ、といい合う婦人たちも、そのままの言葉を戦争はいやだ。戦争はしない。という社会的な戦争拒避の声とした例はまれであった。戦争はいやですわねえ、といいつつ、そのいやなものが強制されればやむを得ないと、屈伏する前提ででもあるかのように、ひそひそと私語がかわされていた。したがって、社会の心理に及ぼす効果をしらべると、戦争なんて、いやですわねえ、とあっちできこえこちらで囁かれる声が、却ってまるで戦争のさけがたさとそれがもう予定されて動かせない事実であるかのような錯覚に導いていた傾きさえあったといえる。一人一人が自分の感情では、戦争がよいことだと思ったりしているものかとわかっていながら、あいまいな、肯定とも否定ともつかないひそひそ語りが、本人の気分では否定している戦争