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こんにちのさっかとどくしゃ
今日の作家と読者
宮本 百合子
「帝国大学新聞」1941(昭和16)年2月24日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,056 字 · 8 页
作家・評論家自身がどのような質の読者として今日立ちあらわれているか、そして自身の状態をどのように自覚しているかということが、それぞれの周囲にある読者圏へ作用し作用されつつ、文化や文学の明日に影響する因子をなしていると思う。読者の問題は、もう作品を生み出してゆく人々自身がどういう質の読者であるかというところまでダイナミックに観察される時代になっている。そして、近頃は、その点でいろいろ深く考えさせられる実例が多い。何故なら、二三年前には文学の仕事にたずさわる人々は特別な専門に従って特別な本を輸入もしていた。それらについて云わば種本ともしていたのだが、このごろは、そういう便宜が次第に失われて来て、大掴みに云えば誰も彼もが大体に同じようなものを読むしかなくなっている。これまでは非常に個人的な系統と統一とをもって形づくられていた一人の作家・評論家の読書が、近頃ではその水脈にさしつかえが生じたと共に、社会の大きな動きそのものがおのずからこれまでの読書の埒をはずさせる点もある。大体皆が同じものを読むことが多くなればなるほど、それに対して自分たちがどういう質の読者であるかということが作家・評論家にとって益々重大な意義をもって来る。