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こんにちのさっかとどくしゃ
今日の作家と読者
宮本 百合子
「帝国大学新聞」1941(昭和16)年2月24日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,056 字 · 8 页
そこが、はっきりとして初めて、その人々の読者にとってその作家・評論家がどういう存在であるかという点も明瞭につかまれることになるのである。
例えば今大変読まれている本にアンドレ・モーロアの『フランス敗れたり』がある。この本の読まれる理由は十分あると思える。日本の近代文学にフランス文学がどのように影響しまた風土化されたかということ迄を考えないひとでも明治以来、日本の文学愛好者の心情に、フランスの作品は常に一つの親愛な存在として感じられている。そこに素朴な空想が加えられているにしても、フランスときけば、芸術と自由な空気というものが感じられるようになっていた。現代文学の歴史のなかでフランスは文化の上におちかかる暴力への抗議者として、様々の矛盾を含みながらも動いたことは人々の記憶に新しい事実である。
フランスは今度の第二次大戦でドイツに敗北した。そのことから与えられた衝撃は或る意味では世界的な性質をもっていたと思う。何故フランスは敗れたのだろう。疑問は人々の眼の色に現われ、言葉にあらわれて、而も特に日本の条件ではその答えをどこからもつかめなかった。いち早く、フランスは頽廃した文化主義で敗れたというような解説者に対して、常識はそれが全部の答えでないことを直感していた。