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こんにちのぶんがくのしょそう

今日の文学の諸相

宮本 百合子

「都新聞」1940(昭和15)年11月28日~12月2日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,522 字 · 17 页

青空文庫

『文芸』の当選作「運・不運」(池田源尚氏)を読み、選評速記を熟読して、深くその感に打たれた。

三

「運・不運」(池田源尚氏)は、この作だけについて決定的なことを云われたら作者も困る作品だろうと思った。『文芸』の今回の選には満場一致のような作品がなくて、そのためかえって話題にのぼった各作品が計らず縦横から相当突こんで語られ、それにつれておのずから今日の文学の諸相も示されている。その点が一般の読者にとっても興味深かった。

未完成な作品として「運・不運」はそのことを積極的な評価として推薦されているわけだが、未完成なのはこの作者と作品のどこのことについてかと、考えさせられた。それは主として小説を書く技術のことではないのだろうか。何故なら、この作者は自分の描こうとする対象への当りかたの根本には、既に一種心得顔のところをはっきり出しているのだから。千六について「若い男が詩人になる経路もきまっている」という箇処のあたり、または同じ千六が「足を折るとまたしばらく詩人になった」というような人生的なようなまとめた文句にして表現しているところ。そういう心情のモメントの概括は本質において常識で、土台それでまとまりがつくなら小説はいらないと云えるような種類のものなのだと思う。