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こんにちのせいかつとぶんかのもんだい
今日の生活と文化の問題
宮本 百合子
「生活の思索」教材社、1941(昭和16)年5月発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,545 字 · 19 页
ドーデはその回想の中に父の優しいよろこびをもってその時分の光景を書いている。その可愛いレオンが一九三六年には六十七歳でブルム襲撃の背後の人となるということを、小市民の善良さで終った小説家の父親ドーデに予想することが出来ただろうか。ドーデが、貧乏しながらこつこつと小説をかいていくらか出来た財力がレオンをそういう男に仕立ててフランスの敗れる一因をなす者として存在させることを、思っても見ただろうか。
今日の生活と文化は、こういう父と子の物語についても私たちに考えさせずにはいないものを示している。
この二三年来、日本の婦人たちの鏡台の上からコティの香水だの白粉だのが姿を消した。ナポレオンと同じコルシカ島のアジャチオ生れのこの敏腕な香水屋が、世界の香水界を支配する実業界の王者となったとき、彼は香水の瓶の形を工夫していることだけには満足しなくなって権力をいじりたくなった。新聞を買収してレオン・ドーデと似たようなことを考え、行った。そして、巴里のムーラン・ルージュの黒人の踊子のジョセフィン・ベイカアを寵愛して、ジョセフィン・ベイカアと云えば、コティの白粉を知っているぐらいの日本の人は知らない者はない世界のレビューの舞姫にした。