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こんにちのじもく

今日の耳目

宮本 百合子

「現地報告」1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,228 字 · 11 页

青空文庫

高札

いつも通る横丁があって、そこには朝鮮の人たちの食べる豆もやし棒鱈類をあきなう店だの、軒の上に猿がつながれている乾物屋だの、近頃になって何処かの工場の配給食のお惣菜を請負ったらしく、見るもおそろしいような烏賊を賑やかに家内じゅう総がかりで揚げものにしている蒲焼の看板をかけた店だのというものが、狭い道に溢れて並んでいる。

そういう横丁の出はずれに一軒しもたやがある。門構えで、総二階で、ぽつんとそういう界隈に一軒あるしもたやは何となし目立つばかりでなく、どう見ても借家ではないその家がそこに四辺を圧して建てられていることに、云わばその家の世路での来歴というようなものも察しられる感じなのである。

何年もその家はそこに在って、二階の手摺に夜具が乾してあるのが往来から見えたりしていたが、昨年の初めごろ、一つの立札がその門前に立てられた。

梅時分になると、よく新宿駅などに、どこそこの梅と大きい鉢植えの梅の前に立てられている、ああいう形の立札が、門の右手に立てられて、そこには、名誉戦死者××××殿と謹んで記されてある。

その立札に記されている名は、後の門の表札に記されている姓名である。