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イタリアのことう

伊太利亜の古陶

宮本 百合子

「中央公論」1924(大正13)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,477 字 · 31 页

青空文庫

晨子は、静かな、おっとりした何でもひとまかせな性質であった。はっきりした欠点は一つもない代り、紹介する時とり立てて相手の興味を牽くような何ものをも持たなかった。上品でこそあれ、彼女の容貌もごく十人並であった。父の高畠子爵が夫人に向って、

「あれは幾つになっても無色透明だな。あれでもよしわるしだ」

と述懐した、その通りの娘なのであった。どうかして、難しい小姑という地位に置かれないうち、自分だけ幸福に見すてられたと妹の島田を見て思わないうち、晨子の運命を明るくしたいという親心を、日下部太郎は同情を以て推察した。彼は、広い交際の網目を彼方此方と注意した。そして、彼が牛津留学時代、その父親と親しくした今度の青年を見出したのであった。

高畠子爵は、青年が有望な外務省書記官であるのを喜んだ。夫人は、爵位のない先方が大槻伯爵の親戚であるので安心した。

日下部太郎は今晩、その礼心として内輪の招待を受けたのであった。

書斎に行くと、日下部は待っていた小間使の手をかりず、気軽に自分で椅子を煖炉の前に持ち出した。

「さあ、どうぞおこのみの席におつき下さい。御婦人がたは火のお近くに」