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イタリアのことう
伊太利亜の古陶
宮本 百合子
「中央公論」1924(大正13)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,477 字 · 31 页
珈琲を静にまわしながら、みや子は微に声の調子を更えた。
「それにつけても、御前様はさぞ御安心でいらっしゃいましょう。もうこれから皆様の御繁昌を御楽しみ遊すだけでございますもの」
「まことにねえ」
子爵夫人は掌の上でだんだん冷える珈琲を飲もうともせず溜息をついた。
「近頃は万事むずかしゅうございましてね。打ちあけたお話が、私共の致すことは若い人にはよかれと存じても気に染まないらしく見えます。それでも、まあ晨子のことは幸い日下部さんのお肝煎でどうやら安堵出来そうでございます。本当におかげに存じておりますよ」
「それどころでございますか」
みや子は力強く対手の感謝を遮った。そして、自分の言葉がまるで土地売買にでも関するようだということには全然心付かず話を進めた。
「及ばずながら日下部も出来ます限りお気風に合いますところと随分心にかけてはおりましたようでございますが……当節のお方はなかなか御註文がどちらもおやかましいものでございますからね。――それでも、晨子さまならばきっとお仕合わせでいらっしゃいましょう」
子爵夫人は、無邪気に然し淋しそうに微笑した。
「それがおかしゅうございます。