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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
岡本綺堂『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:平家蟹、青蛙神、人狼、五色蟹、木曽の怪物、蟹満寺縁起、怪談劇、小坂部姫、小坂部伝説、江戸の化物。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 页
玉虫 むむ、宗清か。遠慮はない、これへ来や。
雨月 いや、まいりますまい。わたくしは御仏に仕えまする者。仏道と魔道とは相さること億万里、お前様のそばへは参られませぬ。
玉虫 それ程わらわがおそろしいか。
雨月 怖ろしいとも存じませぬが、瞋恚執着が凝りかたまって、生きながら魔道におちたるお前さまは、修行の浅いわれわれの力で、お救い申すことはかないませぬ。おいたわしゅうござりますれど、もうおわかれ申しまする。
(詞すずしく云い放ちて、雨月は数珠にてわが身を払いきよめ、笠をかたむけてしずかにあゆみ去る。又もや雨はげしく降りいず。玉虫は起ちあがりて、二つの死骸を見おろす。)
玉虫 呪詛のしるしあらわれて、ここにふたつの生贄をならべた。源氏の運も長からず、一代…二代……。(指折りかぞえて。)おそくも三代の末までには……。かならず根絶やしにして見しょうぞ。(物すごき笑みをもらしつ。)さるにても、妹はともあれ、与五郎は那須の一族。かれを此のように殺したからは、敵も安穏には捨て置くまい。やがて射手の向うは知れたこと……。わらわの身を隠すべきところは……。
(浪の音たかく、一匹の平家蟹這い出で、縁にのぼる。