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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
岡本綺堂『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:平家蟹、青蛙神、人狼、五色蟹、木曽の怪物、蟹満寺縁起、怪談劇、小坂部姫、小坂部伝説、江戸の化物。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 页
小坂部明神なるものが祀られてあるにも拘らず、かれは天主閣に棲んでいると伝えられている。由来、古い櫓や天主閣の頂上には年古る猫や鼬その他の獣が棲んでいることがあるから、それらを混じて小坂部の怪談を作り出したのかも知れない。支那にも何か類似の伝説があるかと思って心がけているが、寡聞にして未だ見あたらない。日本の怪談は九尾の狐ばかりでなく、大抵は三国伝来で、日本固有のものは少ないのであるから、これも何か支那の小説か伝説がわが国に移植されたものではないかとも想像されるが、出所が判然しないので確かなことは云えない。
さて、それから芝居の方であるが、これは専門家の渥美さんに訊いた方がいい。現にわたしも渥美さんに教えられて、初代並木五瓶作の「袖簿播州廻」をくりかえして読んだ。角書にも姫館妖怪、古佐壁忠臣と書いてあるのをみても、かの小坂部を主題としていることはわかる。二つ目の姫ヶ城門前の場とその城内の場とが即ちそれであるが、この狂言では桃井家の後室碪の前がこの古城にかくれ棲み、妖怪といつわって家再興の味方をあつめるという筋で、若殿陸次郎などというのもある。これは淀君と秀頼とになぞらえたもので、小坂部の怪談に託して豊臣滅亡後の大坂城をかいたのである。