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伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

岡本綺堂『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:平家蟹、青蛙神、人狼、五色蟹、木曽の怪物、蟹満寺縁起、怪談劇、小坂部姫、小坂部伝説、江戸の化物。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 页

青空文庫

ながら、諸国をめぐって居りまする。

玉虫 さりとは殊勝なことじゃ。(嘲るごとくに打笑む。)して、景清はなんとした。

雨月 かれは思い立ったることありとて、わたくしが頻りに止むるもきかず、鎌倉へ忍んでくだりました。

玉虫 むむ、鎌倉へ……。家重代という痣丸の銘刀を身につけて行ったであろうな。

雨月 おおかた左様でござりましょう。

玉虫 さすがは景清、あっぱれの者じゃ。その痣丸に源氏の血を……。大方そうであろうの。

雨月 そのように申して居りました。

玉虫 (心地よげにうなずく。)聞くもなかなかに勇ましい。たとい景清ならずとも、武士たるものにはそれほどの覚悟が無うてはなるまい。のう、宗清。過ぎし弥生の廿四日、平家の一門はことごとくこの海に沈んだ。きのうきょうとは思えども、数うれば早やふた月を過ぎて、きょうはあたかも御命日じゃぞ。あれ、あの向うに……松林の薄黒う見ゆるは……文字ヶ関から大里の浜、あれをうしろにして味方の兵船はおよそ五百艘、さながら大鳥がつばさをひろげたように、左右に開いて陣取っていたのじゃ。

雨月 今わたくしが踏んでいる浜辺には、源氏の大軍が真黒にたむろして居りました。