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よれいはつたび

余齢初旅

上村 松園

――中支遊記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,003 字 · 32 页

青空文庫

それで薬を呑んで床にはいったのであった。体温計ではかってみると三十七度八分ほど熱が出ていた。お薬を呑んであたたかくして静かに床についたのであった。翌日になってみるとやはり熱がひかないので医者が来て、あたたかくして寝ているとよいというので、この日一日中床についていた。その翌日は、幸いにも熱が下ったが、外へ出るのはひかえて、三日ほどはその宿で静養していたのであった。そして四日目は抗州の山手に二つばかりある寺をみに行った。寺は玉泉寺というのと雲林院である。ここはやはり皇軍の進撃した戦蹟なのであった。山門なども半分はくだけていた。山手でさびしいところなので、まだあぶないものとみえて、軍の方から十四、五人の兵隊さんがトラックに機関銃をつんで物々しく護衛をして下すった。このためか、幸いに敵の襲撃は受けず、つつがなく参詣することが出来たのであった。玉泉寺には大きな池があった。池はきれいなすみ透った水を湛えていた。大きな鯉が幾十尾とも知れず泳ぎまわっていた。寺の坊さんが鯉に餌をやってくれと言ってキビ藁のようなものをもって来たので、それを鯉にやった。その坊さんはちょうど南画の山水の中にいるような坊さんで、鯉にやった餌と同じものをたべているのだということであった。