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よれいはつたび
余齢初旅
上村 松園
――中支遊記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,003 字 · 32 页
そこから自動車で山手をのぼると雲林院へつくのである。ここには五つ六つくらいの女の子の案内人がいる。いずれも貧家の子であった。それに日本語がいつ習いおぼえたものかうまいものである。私たちが自動車を降りるとその女の子がいきなり走って来て「今日は」と言う。「御案内いたします」なぞと言う。ここには男の子や大人の案内人もいるが、それを出しぬいてこの女の子が一番かせぐらしい。自分が先に立ってどんどん案内してゆく。寺の奥の方には防空壕があった。今はそれも名物のひとつになってしまっている。暗い内部をローソクをひとりひとりが持って、足許を照らしながらはいってゆくが、中はなかなか広く出来ている。そこにはローソクの光に照らし出される寝室や、風呂場や、会議室や、便所などと、いくつにも仕切られた部屋部屋があった。それらはくねくねと曲りくねってつづいているのであった。すると例の女の子は「アスモト御注意下さい」などと案内するのには私もおもわずふき出さずにはいられなかった。
寺にはむろん仏像が祀ってあった。けれども日本の仏像にみられるような尊厳さ、有難味というものがない。それに塗ったのか貼ったのかは知らぬが仏像の金の色でも、本当の金色ではなくてやけに妙な赤味を帯びているのが不愉快な印象を与えた。