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さっかのみたかがくしゃのぶんがくてきかつどう

作家のみた科学者の文学的活動

宮本 百合子

「科学ペン」1937(昭和12)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,638 字 · 17 页

青空文庫

ダアウィンの境遇は謂わばよい意味でのお坊ちゃん風な色調がつよいのに反して、ファブルはコルシカ辺に教師をしたりして貧困と窮乏と闘いつつ、自分の科学への道を切りひらいて行っている。イギリス人とフランス人、特にドウデエなどがまざまざと特徴づけている南フランスの血が、ファブルの気象の中で境遇的にもダアウィンと撥き合ったことは人間生活の画面として無限に興味がある。

素人でよく分らないけれども、ダアウィンが帰納的に種を観察し、進化を観察して行ったに対してファブルが、どこまでも実証的な足場を固執したのも面白い。だが、ファブルの或る意味での科学者としての悲劇は、寧ろそういうところにあったのではなかろうか。

ファブルはダアウィンの著作を退屈でやり切れぬものとして軽蔑している。事実ダアウィン自身文章をかくことはまことに苦手で、はじめと終りの脈絡が書いているうちに自分でもわからなくなるような時があるとかこっている。然し今日のわたくしどもは、却って退屈なダアウィンの方が、ファブルより科学の本としては却って親しめるのである。ここに科学者によって考えられている文学的なるものの微妙な問題がかくされていると思うのである。