轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しゅんかん
俊寛
倉田 百三
「新小説」1919(大正8)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页
もう五本流せば、熊野権現様にたてた誓いのとおり、千本という数になります。
成経 あ。また白帆が見える。ほんとにかすかで、よく見なくては鴎とまちがうくらい小さいけれど。来てごらんなさい。
康頼 わしは見ますまいよ。
成経 早く見ないとかくれてしまう。あなたは初めはわしといっしょに毎日船を見にいらしたではありませんか。
康頼 けれどとてもこの島へは来ないとあきらめたのです。あの船の姿が雲にかくれて見えなくなるときの気持ちが恐ろしくなったのです。わしは何だかあの帆を見ると、葬らいの行列の幡のような気がしてなりません。
成経 何をほうむるのですか。
康頼 わたしたちの希望を!
成経 (悲しげに)あゝ、よしてください。わしのただ一つの希望に、そんな不吉な想像を描くことは。
康頼 わしはそれよりも、日頃念ずる神様の不思議の力によって、都へ帰ることの許さるるよう祈ったほうがいいと思うようになりました。
成経 けれど考えてごらんなさい。その小さな卒都婆が何百里という遠い海を漂うて都のほうの海べに着くということがありましょうか。
康頼 でも千本のうち一本くらいは。
成経 とても九州までも行きはしますまい。