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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

俊寛 (恐怖を隠そうとつとめつつ)それではあなたの役目がたちますまいが。

成経と康頼、基康を凝視す。

基康 わしはこの命令の執達吏にすぎないのだ。わしは清盛殿の意志をあなたがたにお伝えすればそれでいいのだ。あなたがたがそれを受けようと受けられまいと、それはわしの立ち入る限りではない。

三人沈黙す。

基康 (家来に目配せす)出発のしたくをしなさい。

成経 (狼狽す)しばらくお待ちください。

康頼 そのように急がれるにはおよびますまい。

基康 (冷ややかに)あなたがたの意志を聞いた以上は、もはやわしの役目はすんだというものだ。わしは片時も早くこの荒れた島から離れたい。何か都にことづてはありませんか。わしがあなたがたへのただ一つの親切にそれを取りついであげましょう。あゝわしは忘れるところだった。都をたつ時あなたがたにことづかった物があった。故郷からの迎えの使いを拒絶するほどのあなたがたに、たいした用はないかもしれんが。(家来に)かの品を。

家来 (文ばこを基康に渡す)

基康 (文ばこを成経と康頼に渡す)

成経 (ふるえる手にて文ばこを開き、手紙を手に取り裏を返し、表を返しして見る。