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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

けれど今はわしの力もつきたような気がする。この船を逸したら二度と機会は来ないかもしれない。あの荒れた乏しい、退屈な、長い長い日が無限につづくことを思えばたまらない。わしはこの船が地獄に苦しむ罪人を迎えに来た弘誓の船のような気さえしているのだ。

俊寛 (康頼の袖をつかむ)永久に地獄に残るわしの運命を思ってくれ。それもただ一人で! あゝ考えてもぞっとする。残ってください。残ってください。

康頼 わしが帰ったらきっと清盛殿に取りはかろうて迎えの船を送ります。それを信じて待ってください。

俊寛 それがあてになるものか。このたびの処置で清盛がわしをどれほど憎んでいるかがわかる。わしはこの島にただ一人残って船の姿が見えなくなる瞬間が恐ろしい。わしの命がその瞬間を支え得るとは思われない。

康頼 きっと迎えにまいります。その日を待ってください。わしを帰らせてくれ。

俊寛 (康頼を抱く)残ってくれ、残ってくれ。

康頼 (苦悶の極に達す)あゝ。神々よ。

基康 船を出せ!

康頼 待ってくれ。(決心す)わしは帰らねばならない。(俊寛を放す)

俊寛 わしを無間地獄に落とすのか。

康頼 ゆるしてくれ、ゆるしてくれ。