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しゅんかん
俊寛
倉田 百三
「新小説」1919(大正8)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页
何よりも苦しいのは食物がないことだ。わしはいつも餓鬼のように飢えていなければならない。もう弓を引く力もなくなった。水くぐる海士のすべも知らない。(ふと岩陰を見る)見つけたぞ! (岩陰に飛びゆき)待て。かにめ。(あわて捕えんとす)えゝ逃げおったわい。(がっかりする。考える)あゝわしは餓鬼だ。少しの食物を得るためにどんなにあさましいことをしなければならないか。
この時岩かどにとまりいたる兀鷹空を舞い、矢のごとく海面に降り魚を捕えたちさる。
俊寛 あゝわしはあの兀鷹がうらやましいわい。
漁夫一登場、※を岩の上に置き網を打つ。
俊寛 (おずおずと漁夫のそばに近寄る)
漁夫一 (気味悪そうに俊寛を見る。網をあげ、捕えたる魚を※の中に入れ、再び網を打つ)
俊寛 (※の中をのぞきこむ。何かいいかけて躊躇す。やがて思いきりたるごとく)この魚をわしの硫黄と換えてくれまいか。
ふところより硫黄の塊を出す。
漁夫一 (俊寛を軽蔑したように見る)わしはそんなものはいらない。(網を引き上げる)
俊寛 そうであろうが二、三尾でいいから換えてくれまいか。
漁夫一 九州から硫黄を買いに来る商人に持ってゆくがいい。