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しゅんかん
俊寛
倉田 百三
「新小説」1919(大正8)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页
九州の地にさえ着けばそこからは都へ通う船は多いのだから。
康頼 わしらが飛ぶ鳥も落とす清盛に謀叛して、島流しになってる身であることを、知らない者はありません。とても船にのせてはくれません。島の漁師たちさえわしらを恐れて近づかぬではありませんか。
成経 何とかして商人をだまして九州まで行けば、どこかに隠れて時期をうかがうこともできるだろう。
康頼 草の陰、洞のすみを捜しても、あの清盛が見つけ出さずにはおきますまい。そうなったら今度はとても生かしてはおきますまい。
成経 (絶望したように)あゝ。わしは人間というものがこのようなさびしい、乏しい状態に陥り得るものとは思わなかった。いや、それよりもかような寂寞と欠乏とに耐えてもなお生を欲するものとは思わなかった。わしがもし死を願うことができたなら! わしはたびたびそう思うのです。もしわしがわしのただ一つの希望を失ってしまったら、も一度都へ帰れるかもしれないという、かすかな、何のよりどころもないこの空想を。(悲しげに)あゝこの空想を描く勇気をもはや失ってしまったなら、わしは泥のようにくずれて死んでしまうであろうと。