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ぞくしゅう
俗臭
織田 作之助
「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页
知り合いがいなければ、誰がこの事実に驚いてくれるだろうか。
卵巣切開によりほのかに残っている色気を殆んど無くしてしまったが、もと/\彼女は百万長者の御寮さんという肩書の為に幾分損をしているところもある。が、このたびのパアマネントウェーブは彼女の醜貌を決定的にしてしまったと周囲の人々は口喧しく騒いだ。
「娘ももう年頃になったことやさかい、私も今までとは交際いが違て来まっしゃろ。今まで通り旧弊な髪結うてたら娘の嫁入り先に阿呆にされまんがな。今日日はパアマネントオーの一つ位掛けんことには、良家の人と交際も出来まへんさかいナ。それに、何でんがナ。一ぺん掛けといたら半年は持つゆうことやし、私も髪さんで髪結うより安うつく、こない思いましてナ」
と政江はいいふらした。今まで「私」「私」と云っていた彼女が、この時打って変った様に「私」と上品な云い方を用い出したことは、人々、就中、政江の義妹たちの注目をひいた。この変化は何に原因するのかと考えた揚句、かすかに思い当る節があった。
東京の崎山某という紳士がちかごろ頻繁に東京大阪間を往復して児子家に出入している。最初崎山は代議士であると誤解されていた。