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ぞくしゅう
俗臭
織田 作之助
「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页
児戯に価することだ。が、そういう哀れな千恵造なればこそ、賀来子との腐れ縁が続けられたのかも知れぬ。
千恵造の出奔を切っ掛けとして、児子家は以後多事多端であった。
その一つ。権右衛門が統制違反で拘引された。沈没汽船引揚、及解体作業が完成して、愈々銅鉄品を売捌くに当って、闇取引をしたのである。鉄線一貫目三十銭以上に売るべからざるを一円四十銭に売ったその他いろ/\。「闇」をやらねば、幾らも儲からぬ事業だった。平野署に二十日間留置されて、権右衛門は帰宅した。留置中、彼は種々人生問題に就て、思案した。が、余り得るところもなかった。たゞ、一つ、之まで商売人は高く売るのが自慢だったが、今はそうでなくなったということに就て、深く納得するところがあった。一万円の罰金刑に処せられた。
その二つ。権右衛門の留置を機会に、政江は、「心霊研究」即ち、「神さん」に凝り出した。権右衛門の帰宅の日を「神さん」の先生がいい当てたのが動機である。「神さん」の先生は色魔ということだから、早晩、児子家では、家庭争議があるだろうと専ら噂されている。この間の事情に就ては述ぶべきことが多いが、何れはありきたりのものだ。