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いつわりのないぶんかを

偽りのない文化を

宮本 百合子

「女性改造」1948(昭和23)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,161 字 · 18 页

青空文庫

日本精神という四字が過去十数年間、その独断と軍国主義的な狂言で、日本の精神の自然にのびてゆく道をさえぎっていた罪過ははかりしれないほどふかい。作家横光利一の文学の破滅と人間悲劇の軸は、彼の理性、感覚が戦時的な「日本的なもの」にひきずられて、天性の重厚のままにとりかえしのつかないほど歪み萎えさせられたところにある。

森鴎外にしろ、夏目漱石にしろ、荷風にしろ、当時の社会環境との対決において自分のうちにある日本的なものとヨーロッパ的なものとの対立にくるしんだ例は、日本の文化史の上にどっさりある。漱石が生涯の最後に「明暗」をかきながら、自分の文学のリアリズムに息がつまって、午前中小説をかけば午後は小説をかくよりももっと熱中して南画をかき、空想の山河に休んだということは、何故漱石のリアリズムが彼を窒息させたかという文学上の問題をおいても、大正初期の日本文化の一つの特徴的な苦悩の姿であった。

こういうヨーロッパ的なものと日本的なものとの間にひっぱられ、板ばさみに会う感情は、きょうでは決して鴎外や漱石だけの問題ではなくなって来ていると思う。レマルクの「凱旋門」