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ぼくはこれからだ
僕はこれからだ
小川 未明
「新児童文化 第3冊」1941(昭和16)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,555 字 · 17 页
「ああ、それがいいよ。」と、伯母さんも、いっていました。
隣家は、薪炭商であって、そこには、達吉より二つ三つ年上の勇蔵という少年がありました。
「おい、達ちゃん、リヤカーに乗せてやろうか。これから、この炭をとどけにいくのだから。」と、道の上に茫然として立っている達吉を見つけて、声をかけました。
「そして、帰りに、梅の実をもいでこようよ。」と、勇蔵は元気にいいました。
達吉は、リヤカーに乗せてもらって、車の上から、はじめて見る町の景色を物珍しそうにながめていました。勇蔵は、品物の配達を終わると、軽くなったリヤカーをさらに勢いよく走らせて、町を突っ切り、原っぱへと出ました。広々とした原っぱには、一角に屋敷跡のようなところがあって、青々とした梅林には、実がたくさん生っていました。
「あれごらんよ、すっかり種子が固まっているのだぜ。」と、勇蔵が、酸っぱそうな口つきをして、いいました。
達吉の目の中に、このとき、北方の憂鬱な黒い森の景色がよみがえったのだ。そこは、自分の生まれた村である。いまも、陣々として、頭の上を吹く風の中に、たんぼの野菜の葉が白い裏を返すのである、そして、やつれた母の涙ぐんだ顔が浮かぶのでありました。