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そう

僧

小川 未明

「新小説」1910(明治43)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,206 字 · 21 页

青空文庫

中には後れて泣き叫んだものがあった。

この事が村に広った時、四五人の者は、母を憐れんで、この狂人の捜索に出た。その夜、寺の林で取り押えて再び檻を修繕して裡に入れたという。

西の夕焼が紅く、寺の墓畔に立つ胡桃の木の枝を染める時、この景色を見た子供等は、きっと狂人のことを思い出して話し合った。

村の人が、この狂人親子の惨死を遂げているのを発見した時、短刀で、我が児の咽喉を突貫して、自分がその死骸の上に折り合って自殺を遂げていた母を見た。外には、吹雪がしていた。陰気な光線は戸の隙間を洩れて、この火の気すらなかった家を悲しげに照していた。何一つ道具らしいものはなかった。死ぬ時まで、内職をしていた燈心が、黒い、傷の付いた板の辺に散っているのを見た。

その血は青い色をしていた。その燈心の白は、色を抜き取った色の如く、見る人の心を茫然たらしめた。

或る一人はこういった。一昨日の大吹雪に傘も差さずに急いで町の方から、狂人の母親が帰って来るのを見た。鼻緒の弛るんだ下駄は雪に埋って、指は紅く凍えて、見るからに血の枯れた白髪は風に吹かれて傷ましげであった。

村の人々は、何故、母が子を殺して自殺したかを疑った。